深溝加工の課題解決:切りくず詰まりと工具摩耗の対策

皆さんこんにちは、アキヤマエヌシーテープセンターの秋山です。

今回は、深い溝をエンドミルで加工する際、切りくずの排出不良による工具破損や加工面悪化を防ぐための、工具形状と加工条件の工夫を解説します。

エンドミルで深い溝を加工していると、切りくずが詰まってしまい、突然工具が折れてしまった。あるいは、加工し終わった溝の側面が荒れていて、要求された精度を満たせなかった。このような経験は、ものづくりに携わる方なら一度は直面する課題ではないでしょうか。この問題は、単に工具を交換するコストだけでなく、材料のロスや納期の遅れにもつながりかねません。この記事では、深溝加工における切りくずの排出という根本的な課題に焦点を当て、工具の選び方と加工条件の工夫によって、いかに安定した加工を実現できるかを一緒に考えていきたいと思います。

1. なぜ深い溝では切りくずが詰まりやすいのか

まず、なぜ深い溝の加工は難しいのでしょうか。その理由はとてもシンプルです。溝が深くなればなるほど、発生した切りくずが外に排出されるまでの道のりが長くなるからです。浅い溝であれば、切りくずは加工の勢いで簡単に外へ飛び出していきます。しかし、溝が深くなると、切りくずは溝の壁に何度もぶつかりながら、かき出されるのを待つしかありません。その間に次々と新しい切りくずが生まれ、やがて渋滞を起こしてしまいます。この「切りくずの渋滞」が、工具に絡みついたり、溝の底で圧縮されたりして、工具の破損や加工面の悪化を引き起こす主な原因なのです。

2. 課題解決の鍵は「切りくずの形」

この問題を解決するための基本的な考え方は、切りくずをスムーズに排出できる形にコントロールすることです。理想的なのは、切りくずが長くつながった麺のような状態ではなく、細かくカールしたチップ状に分断されている状態です。細かく分断された切りくずは、互いに絡みつきにくく、クーラントやエアブローの力で溝の外へ排出されやすくなります。つまり、私たちの目標は「いかにして切りくずを細かく、排出しやすい形にするか」という点に集約されます。この目標を達成するために、工具の形状と加工条件という二つの側面からアプローチしていきます。

3. 工具選びの三つの視点

切りくずの排出性を高めるためには、エンドミルの形状選びが非常に重要になります。ここでは三つのポイントに絞って見ていきましょう。一つ目は「刃の数」です。同じ直径のエンドミルであれば、刃の数が少ない(例えば4枚刃より2枚刃)方が、一本一本の刃の間にある「切りくずポケット」と呼ばれる空間が広くなります。このポケットが広いほど、大きな切りくずもスムーズに抱え込んで排出できるため、深溝加工には少ない刃数の工具が有利になることが多いです。二つ目は「ねじれ角」です。刃のねじれが強い「強ねじれ」のエンドミルは、切りくずを上方向へとかき出す力が強く働きます。これにより、溝の底から切りくずを効率的に排出する助けとなります。三つ目は「コーティング」です。工具表面の滑りを良くする潤滑性の高いコーティングは、切りくずが工具に溶着してしまうのを防ぎ、スムーズな排出をサポートしてくれます。

4. 加工条件の工夫:ステップ加工の活用

適切な工具を選んだら、次は加工条件の工夫です。深溝加工で特に有効なのが「ステップ加工」という方法です。これは、一度に目標の深さまで削るのではなく、例えば1ミリずつ、あるいはそれより浅く、段階的に何度も切り込んでいく方法です。一回あたりの切り込み量が少ないため、発生する切りくずも小さくなり、排出が容易になります。また、工具が溝の奥に入りっぱなしになる時間が短くなるため、切りくずを排出するための時間的な余裕も生まれます。このステップ加工と合わせて、圧縮空気で切りくずを吹き飛ばす「エアブロー」や、切削油を勢いよく吹きかける「ジェットクーラント」などを効果的に使うことで、切りくずの排出性は格段に向上します。

5. 発想の転換:高送り加工というアプローチ

もう一つ、少し発想を変えたアプローチとして「高送り加工」があります。これは、Z方向の切り込み量(ステップ量)を意図的に非常に浅くする代わりに、工具を送る速度(送り速度)を大幅に上げる加工方法です。切り込みが浅いため、発生する切りくずは非常に薄くなります。薄い切りくずは小さく分断されやすく、溝の中に溜まりにくいという利点があります。この方法は、特に硬い材料の加工や、加工時間を短縮したい場合に有効な選択肢となり得ます。ただし、使用する工具や機械の性能に適した条件設定が必要になるため、工具メーカーが推奨する条件を参考にしながら試していくことが大切です。

6. 安定した加工がもたらす価値

これまで見てきたように、工具の選定と加工条件の工夫を組み合わせることで、深溝加工における切りくず詰まりのリスクは大幅に低減できます。これにより、工具の突発的な破損が減り、工具寿命が延びることで、直接的なコスト削減につながります。また、切りくずによる加工面へのダメージがなくなるため、安定して精度の高い製品を作ることが可能になります。加工が安定すれば、予期せぬトラブルによる手戻りや機械の停止時間も減り、結果として生産性が向上し、納期を守ることにも貢献します。これは、設計者が意図した通りの品質を、計画通りに実現できるということです。

7. まとめ:知識を活かして、より良いものづくりへ

深溝加工における切りくず詰まりという課題は、決して避けては通れないものです。しかし、その原因を正しく理解し、工具の形状や加工条件といった基本的な要素を見直すことで、解決の糸口は必ず見つかります。今回ご紹介したアプローチが、皆さまの現場での課題解決の一助となり、より安定した、高品質なものづくりにつながれば幸いです。一つ一つの技術的な課題を乗り越えていくことが、設計の可能性を広げ、最終的にお客様に喜んでいただける製品を生み出す力になると考えています。


もし、設計や加工方法のことでお困りでしたら、私たちのような加工の専門家が、その知見を活かして何かお役に立てることがあるかもしれません。

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