加工現場のナレッジ共有:熟練技術者の暗黙知の言語化

皆さんこんにちは、アキヤマエヌシーテープセンターの秋山です。

今回は、熟練技術者が持つ「経験と勘」に基づく暗黙知を、加工データ、手順書、トラブル事例として体系的に言語化し、若手に伝える方法を共有します。

「あのベテランのAさんがいないと、この加工はできない」「若手にどう技術を教えたらいいか分からない」。多くの加工現場で、このような悩みを耳にします。熟練技術者が長年の経験で培った「経験と勘」は、数値や言葉にしづらい「暗黙知」となりがちです。この暗黙知がうまく伝わらないと、技術の属人化が進み、品質が安定せず、若手の成長も遅れてしまいます。この記事では、そんな貴重な技術をどうすれば言語化し、組織全体の力として共有できるのか、具体的なステップに沿って、一緒に考えていきたいと思います。

1. なぜ「経験と勘」の言語化が必要なのでしょうか

そもそも、なぜ熟練の技を言葉にする必要があるのでしょうか。それは、技術の属人化がもたらすリスクを避けるためです。特定の技術者にしかできない作業があると、その方が不在の際に生産が止まってしまったり、品質にばらつきが生じたりする可能性があります。また、技術が継承されなければ、会社の未来を担う若手が育ちません。暗黙知を言語化し、誰もが理解できる「形式知」に変えることは、単なる技術伝承にとどまらず、組織全体の生産性を安定させ、品質を維持・向上させるための重要な基盤づくりなのです。

2. ステップ1:加工条件を「数値」で記録する

言語化の第一歩は、曖昧な感覚を具体的な「数値」に置き換えることから始まります。「いつも通りの感じで」とか「このくらいの切り込みで」といった表現をやめ、全ての作業を数値で記録する習慣をつけましょう。例えば、使用する機械、工具の種類、刃物の突き出し量、主軸の回転数、送り速度、切り込み量、切削油の種類や濃度といった基本的な情報です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、この地道な記録こそが、感覚に頼っていた作業を客観的なデータに変えるための基礎となります。このデータが蓄積されることで、なぜその条件で上手くいったのかを後から分析する土台ができるのです。

3. ステップ2:「なぜ」を深掘りし、手順書に落とし込む

数値を記録するだけでは、まだ十分ではありません。大切なのは、その数値を選んだ「理由」を明らかにすることです。これが第二のステップです。例えば、「なぜこの材質では、回転数をいつもより10%下げるのか」という問いに対して、「この材料は粘り気が強く、加工熱で溶着しやすいため、回転を抑えて熱の発生を防ぐため」といった理由を文章で書き加えます。この「なぜ」の部分こそが、熟練技術者の思考プロセスそのものであり、暗黙知の核心です。この理由を手順書に明記することで、若手技術者は単に作業を真似るだけでなく、原理原則を理解しながら学ぶことができ、応用力が身についていきます。

4. ステップ3:成功と失敗を「事例集」として共有する

最後のステップは、日々の加工で起きた出来事を「事例集」として蓄積し、共有することです。特に、うまくいかなかった「失敗事例」は、非常に価値のある情報源となります。「こんな音がしたら工具の寿命が近いサイン」「切りくずがこの色になったら、送り速度が速すぎる可能性がある」といった、五感で得られる情報も、写真や動画と一緒に記録すると、より伝わりやすくなります。トラブルが発生した際に、その原因と対策を記録した事例集があれば、次に同じような問題が起きても迅速に対応できます。失敗を隠すのではなく、組織全体の学びの機会として共有する文化を作ることが、技術レベルの底上げに繋がります。

5. 言語化を促進するコミュニケーションの場づくり

これらのステップを実践するには、現場でのコミュニケーションが欠かせません。若手がベテランに気軽に質問できる雰囲気や、ベテランが自分の技術について語る場を意識的につくることが大切です。例えば、週に一度、数分でも良いので、加工のポイントについて話し合う時間を設けるのも一つの方法です。教える側も、自分の技術を言葉で説明しようとすることで、自身の知識が整理され、新たな気づきを得ることがあります。技術の言語化は、教わる側だけでなく、教える側にもメリットがあるのです。

6. 技術の標準化がもたらす、品質と生産性の向上

ここまでお話ししてきた暗黙知の言語化は、技術の「標準化」と言い換えることができます。作業が標準化されると、誰が担当しても一定の品質を保つことができるようになります。これにより、品質(Quality)は安定し、手戻りや不良品が減ることで、コスト(Cost)の削減にも繋がります。また、若手技術者が早期に戦力化することで、組織全体の生産性が向上し、お客様への納期(Delivery)を守ることにも貢献します。技術伝承は、企業の競争力を高めるための重要な投資なのです。

7. 小さな一歩から始める技術伝承

いきなり全ての技術を言語化しようとすると、大変に感じてしまうかもしれません。まずは、一つの製品や、一つの工程からで構いません。今日からできる小さな一歩として、まずは加工条件の記録を始めてみてはいかがでしょうか。その小さな積み重ねが、数年後には会社の大きな財産となっているはずです。この記事が、皆さまの現場で技術伝承を進めるための、何かのヒントになれば幸いです。


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