皆さんこんにちは、アキヤマエヌシーテープセンターの秋山です。
今回は、5軸加工機の二つの主要な制御方式が、加工精度と工具の自由度にどう影響するかを具体的に解説します。
複雑な形状の部品を設計したものの、「この形状は本当に加工できるのだろうか」「5軸加工なら大丈夫と聞くけれど、コストが心配」といった不安を感じたことはありませんか。特に、5軸マシニングセンタには「同時5軸制御」と3+2軸制御」という二つの方式があり、どちらを選ぶかによって加工の可能性やコストが大きく変わってきます。この記事では、この二つの制御方式の違いを分かりやすく解説し、皆さんの設計における課題解決のヒントを提供できればと思います。
1. そもそも5軸加工が求められる理由
まず、基本となる5軸加工について簡単におさらいしましょう。一般的な3軸加工機が、工具を前後(X軸)、左右(Y軸)、上下(Z軸)に動かすのに対し、5軸加工機はそれに加えて、テーブルや工具のヘッドを回転させたり(C軸)、傾けたり(A軸またはB軸)する二つの軸が備わっています。この追加された二つの軸のおかげで、一度の段取り(ワークの固定)で、複雑な形状の様々な面から工具を当てることができるのです。これにより、段取り替えの手間が省け、作業時間短縮と位置決め精度の向上が期待できます。また、工具を最適な角度でワークに当てられるため、加工面の品質向上にもつながります。
2. 3+2軸制御(割出5軸)の仕組みと得意なこと
「3+2軸制御」は、「割出5軸」や「位置決め5軸」とも呼ばれます。この方式の動きを簡単に説明すると、まず回転・傾斜の2軸を使ってワークを加工したい角度に固定します。そして、その角度が決まったら、残りの3軸(X, Y, Z)を動かして切削加工を行う、という流れです。つまり、加工中は回転・傾斜の2軸は動かず、あくまで「位置決め」のために使われます。この方式の大きなメリットは、機構が比較的シンプルで、加工機本体の剛性を高く保ちやすい点です。そのため、高い精度が求められる平面や穴あけ加工に向いています。複数の傾斜面を持つ部品などを、少ない段取りで効率よく加工するのに非常に適した方法と言えるでしょう。
3. 同時5軸制御の仕組みと広がる可能性
一方、「同時5軸制御」は、その名の通り、5つすべての軸が同時に、滑らかに連動して動く制御方式です。工具の先端がワークから離れることなく、常に最適な角度を保ちながら複雑な曲面をなぞるように加工を進めることができます。例えば、飛行機のタービンブレードやスクリュー、人工関節といった、滑らかでねじれたような自由曲面を持つ形状の加工は、この同時5軸制御でなければ実現が困難です。また、工具を傾けながら加工できるため、工具の突き出し量を短くでき、たわみを抑えた高精度な加工が可能になるというメリットもあります。設計の自由度を最大限に引き出せる、非常に高度な加工方法です。
4. 設計者として知っておきたい二つの方式の使い分け
では、設計者としては、この二つの方式をどのように考えればよいのでしょうか。大切なのは、「すべての複雑形状に同時5軸が必要なわけではない」という視点です。例えば、いくつかの面に角度のついた穴が開いているだけの部品であれば、3+2軸制御で十分に対応できます。この場合、同時5軸制御で加工プログラムを作成すると、かえって時間とコストがかかってしまう可能性もあります。一方で、インペラのように羽根一枚一枚が滑らかな曲面で構成されている部品は、同時5軸制御が必須となります。設計段階で、「この形状は位置決めだけで加工できるか、それとも滑らかな動きが必要か」を少し意識するだけで、製造コストを抑えつつ、必要な品質を確保する設計が可能になります。
5. 加工方法の理解が設計の質を高める
このように、二つの制御方式にはそれぞれ得意なことと不得意なことがあります。3+2軸制御は、効率と精度を両立させたい場合に非常に有効な手段です。同時5軸制御は、従来の加工方法では不可能だった複雑な形状を実現するための切り札となります。どちらが優れているという話ではなく、作りたい部品の形状や求められる精度、そしてコストに応じて最適な方法を選択することが重要です。設計者が加工方法の特性を少しでも理解していると、加工現場とのコミュニケーションもスムーズになり、より良い製品づくりにつながっていきます。
6. 最適な選択が品質、コスト、納期を満たす鍵
ここまで、5軸加工における「3+2軸制御」と「同時5軸制御」の違いについて解説してきました。この二つの技術を正しく使い分けることが、お客様が求める品質、コスト、納期のすべてを満たすための重要な鍵となります。不必要に高度な加工方法を選べばコストが上がり、逆に単純な方法に固執すれば実現できない設計が生まれてしまいます。それぞれの特性を理解し、設計の意図に最も合った加工方法を見極めることが、ものづくりの本質的な価値を高めることにつながるのです。
この記事を通じて、5軸加工の制御方式による違いが、皆さんの設計業務のヒントになれば大変うれしく思います。加工の知識は、設計の自由度を広げ、アイデアを現実に変えるための強力な武器になります。私たちは、これからも技術的な知見を分かりやすくお伝えすることで、皆さんのものづくりを応援していきたいと考えています。
もし、設計や加工方法のことでお困りでしたら、私たちのような加工の専門家が、その知見を活かして何かお役に立てることがあるかもしれません。
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