工具摩耗の進行パターンと交換時期の判断基準

皆さんこんにちは、アキヤマエヌシーテープセンターの秋山です。

今回は、工具摩耗の形態(フランク摩耗、クレーター摩耗など)を分析。安定生産を維持するための、予防的な工具交換タイミングの決め方を共有します。

「工具がいつ壊れるか分からず、突然のトラブルで生産が止まってしまう」「工具交換のタイミングが人によってバラバラで、加工精度が安定しない」「コストを抑えたいけれど、工具を長く使いすぎて不良品が出てしまう」。機械加工の現場では、このような悩みを抱えている方が少なくないのではないでしょうか。安定した生産と高い品質を維持するためには、工具の交換時期を感覚に頼るのではなく、論理的に判断することがとても大切です。この記事では、工具摩耗の種類を正しく理解し、最適な交換タイミングを見極めるための具体的な考え方をご紹介します。

1. なぜ工具交換のタイミングが重要なのでしょうか

安定した生産の土台となるのが、工具の状態管理です。もし交換が早すぎれば、まだ使える工具を捨てることになり、コストの増加に直結します。逆に遅すぎれば、加工精度が悪化したり、最悪の場合は工具が破損して製品だけでなく機械にまで損傷を与えたりするリスクが高まります。適切なタイミングで交換することで、品質のばらつきを抑え、コストを最適化し、安全な作業環境を維持できるのです。これは、設計者が意図した通りの部品を、安定して作り続けるための基本中の基本と言えるでしょう。

2. 工具摩耗の代表的なパターンを知りましょう

工具の摩耗にはいくつかのパターンがあります。すべてを一度に覚えるのは大変なので、まずは代表的な2つの摩耗を理解することから始めましょう。一つ目は「フランク摩耗(逃げ面摩耗)」です。これは、工具の刃先が加工する材料とこすれることで、逃げ面という部分が徐々にすり減っていく現象です。工具を使っていれば必ず発生する、最も一般的な摩耗と言えます。これが進行すると、加工精度が悪くなったり、加工面の仕上がりが粗くなったりする原因になります。二つ目は「クレーター摩耗(すくい面摩耗)」です。これは、切りくずが工具のすくい面という部分を滑っていくときの熱と圧力で、その表面がえぐれてしまう摩耗です。特に、高速で加工するときや、硬い材料を削るときによく見られます。これが進むと刃先の強度が落ちて、突然欠けてしまう原因になります。

3. 摩耗の進行段階と「限界」の見極め方

工具の摩耗は、一般的に3つの段階をたどります。使い始めに少し摩耗が進む「初期摩耗」、その後しばらく安定して摩耗が進む「定常摩耗」、そしてある時点から急激に摩耗が進む「偶発摩耗」です。私たちの目標は、工具がこの「偶発摩耗」の段階に入る直前、つまり「定常摩耗」の終わり際で、予防的に交換することです。では、その「限界」はどこで判断すれば良いのでしょうか。一つの分かりやすい基準は、摩耗の「幅」です。例えば、フランク摩耗であれば、摩耗した部分の幅を測定し、その幅が一定の数値(例えば0.2mmなど)に達したら交換する、というルールを設けます。この限界値は、求める加工精度や使用する工具、材料によって変わってきますので、自分たちの基準を持つことが重要です。

4. データに基づいた交換時期の決定方法

感覚に頼るのではなく、データを基に交換時期を決めることが品質を安定させる鍵です。まずは、同じ加工条件で複数の工具を使い、それぞれ何個の製品を加工したら摩耗が限界に達したかを記録してみましょう。例えば、10本の工具でテストした結果、平均して500個の製品を加工した時点で摩耗が限界に達したとします。この場合、安全を考慮して、少し手前の450個を交換の目安にする、といった予防的な基準を設定できます。このように数値で管理することで、作業者が変わっても同じタイミングで工具を交換でき、製品品質の安定につながります。

5. 加工中の「変化」に気づくことの重要性

数値的な管理と合わせて、日々の加工中の変化に気づくことも非常に重要です。例えば、いつもと比べて加工中の音が甲高くなってきた、加工面の光沢がなくなってきた、バリ(材料の余分な出っ張り)が増えてきた、といった変化は、工具摩耗が進行している大切なサインです。これらの変化は、機械が示す主軸の負荷(ロード値)のモニタリングでも捉えることができます。負荷が普段より高くなってきたら、摩耗が進んで切れ味が悪くなっている可能性が高いと判断できます。日々の小さな変化を注意深く観察する習慣が、突発的なトラブルを未然に防ぐことにつながるのです。

6. 安定生産がもたらす品質とコストへの好影響

ここまでお話ししてきたように、工具摩耗を正しく理解し、論理的な基準で交換時期を管理することは、安定生産の基盤となります。突発的な工具の破損がなくなれば、機械の停止時間が減り、生産計画通りに製品を供給できます。これはお客様との約束である納期を守る上で非常に重要です。また、摩耗が進んだ工具で加工を続けることによる不良品の発生を防げるため、材料の無駄や手直しのコストを大幅に削減できます。このように、安定した品質は、お客様からの信頼に直結するのです。

 

この記事でご紹介した工具摩耗の管理は、単なる生産現場の改善活動にとどまりません。どのような加工条件であれば、どれくらいの精度を、どれくらいの期間安定して維持できるのかを把握することは、製品を設計する方々にとっても非常に有益な情報となります。加工の限界や特性を深く理解することで、より挑戦的な設計や、コストと品質のバランスが取れた最適な設計が可能になります。加工現場で培われた知見は、ものづくり全体の質を一層高める力を持っているのです。

もし、設計や加工方法のことでお困りでしたら、私たちのような加工の専門家が、その知見を活かして何かお役に立てることがあるかもしれません。

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