マシニング加工の基礎:除去加工と付加製造の役割比較

皆さんこんにちは、アキヤマエヌシーテープセンターの秋山です。

 

最近、新しい部品の試作を考える中で、「3Dプリンタ(付加製造)と切削加工(マシニング)、どちらを選べば良いのだろう?」と悩んだ経験はありませんか。特に、コストを抑えつつも必要な精度を確保したい、あるいは設計の自由度と部品の強度を両立させたいといった場面では、最適な工法の選択がとても重要になります。この記事では、ものづくりの基本である「除去加工」と、新しい技術である「付加製造」の役割を比較しながら、それぞれの本質的な価値を解き明かし、皆さんの設計や工法選定のヒントになるようなお話ができればと思います。

1. ものづくりの王道、「除去加工」とはなんでしょう?

まず、私たちマシニング加工の専門家が日々行っている「除去加工」について、簡単にご説明します。これは、とてもシンプルな考え方に基づいています。金属や樹脂の大きな塊(材料)から、不要な部分を工具で削り取っていくことで、目的の形を作り出す方法です。ちょうど、彫刻家が石の塊から美しい像を彫り出す姿をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。この方法の最大の特長は、もともとの材料が持っている性質をそのまま活かせる点にあります。だからこそ、高い強度や精度が求められる部品作りに非常に向いているのです。

2. 新しい可能性を秘めた「付加製造」

一方、近年注目を集めているのが「付加製造」、一般的には3Dプリンティングとして知られています。こちらは除去加工とは全く逆の発想で、何もないところから材料を一層一層、まるでケーキのクリームを絞るように積み重ねていくことで立体的な形を作り上げます。この方法の素晴らしい点は、除去加工では作ることが難しかった、非常に複雑な内部構造や一体化した形状を、データさえあれば実現できる設計の自由度の高さにあります。試作品など、まずは形にしてみたいというニーズに素早く応えられるのが大きな魅力です。

3. 精度と表面の美しさ、どちらが優れている?

部品を作る上で、精度や表面の仕上がりは非常に重要な要素ですよね。この点において、除去加工は大きな強みを発揮します。工作機械と精密な刃物を使って材料を直接削り出すため、ミクロン単位での寸法精度を実現でき、表面も鏡のように滑らかに仕上げることが可能です。一方、付加製造は材料を積み重ねていく原理上、どうしても層と層の間に微細な段差(積層痕)が残りがちです。もちろん技術の進歩で精度は向上していますが、高い摺動性や気密性が求められる部品では、除去加工に軍配が上がることが多いのが現状です。

4. 材料の選択肢と、できあがった部品の強さ

設計する部品に、どのような材料を使い、どれくらいの強度を持たせるかは、製品の性能を左右する大切なポイントです。除去加工では、アルミニウムやステンレス、鉄といった一般的な金属から、特殊な樹脂まで、市場で手に入るほとんどの固形材料を加工対象にできます。そして、塊から削り出すため、材料本来が持つ強度や粘り強さを最大限に活かした、信頼性の高い部品を作ることができます。対して付加製造は、使用できる材料が専用の樹脂や金属粉末に限られることが多く、また、積層する方向によって強度が変わる場合があるため、大きな力がかかる構造部品には慎重な検討が必要です。

5. 結局、コストと時間はどちらがお得?

「一個だけ、すぐに形が見たい」。そんなとき、付加製造は非常に強力な選択肢になります。金型も不要で、設計データから直接造形できるため、超複雑な形状の試作品を一つ作る、といったケースではコストと時間を大幅に削減できる可能性があります。では、除去加工はどうでしょうか。一つ一つの部品を作るための準備(段取り)やプログラム作成には時間がかかることもありますが、一度準備が整えば、同じものを効率良く、速く、そして安く作ることができます。特に、ある程度の数を生産する場合には、除去加工のコストメリットは非常に大きくなります。

6. 適材適所で見極める、二つの技術の賢い使い分け

ここまでお話ししてきたように、除去加工と付加製造は、どちらが一方的に優れているというものではありません。大切なのは、それぞれの長所と短所を正しく理解し、作りたい部品の目的や要件に合わせて「使い分ける」ことです。例えば、デザインの確認や、除去加工では作れないような複雑な内部構造を持つ部品の試作には付加製造が力を発揮します。一方で、最終製品として市場に出すための高い精度や強度が求められる部品、あるいは量産品には、信頼と実績のある除去加工が最適と言えるでしょう。

7. 最適な工法選びが、良い製品づくりの第一歩です

良い製品を生み出すための設計とは、単に形を考えるだけではありません。その形を、いかにして品質、コスト、納期のバランスを取りながら実現するか、という製造の視点を持つことが不可欠です。除去加工と付加製造、それぞれの役割を深く理解することは、皆さんの設計の引き出しを増やし、より良いものづくりへと繋がる確かな一歩となります。

 

もし、設計や加工方法のことでお困りでしたら、私たちのような加工の専門家が、その知見を活かして何かお役に立てることがあるかもしれません。 ぜひ、気軽に声をかけてみてください!

 

メールフォーム:https://akiyama-nc.com/contact/ 

電話:0545-35-2958

(電話受付時間:9:00-17:00 / 定休:土日祝)

 

お問い合わせの際に「ブログ見たよ~」と言っていただけると励みになります^^

Contactお問い合わせ

まずはお気軽にお問い合わせください。